クラフトマンシップ溢れる世界一の野球帽
野球用語で”ポテンヒット”という言葉があるのは知っているだろうか。
ふらふらと上空に打ち上がった力のない打球が、内野手と外野手との間に落ちるヒットになること。
これは内野手と外野手がそれぞれお互い相手の方が先に球を捕ってくれるだろうという譲り合いから起こってしまうもの。
僕は野球は遊び程度でしかやったことがないけど、遊びでもプロの世界でもしばしばこうしたことは見られる光景であるように思う。
野球が心の底から大好きなGwynn(グウィン)の代表である井口浩伸氏が2016年に立ち上げた野球への愛情をたっぷり注ぎ込んだ唯一無二の帽子専門ブランド”POTEN(ポテン)”
POTENの帽子は岡山県にある野球帽を専門に製作している工場で一貫して生産を行っている。
野球帽専門の製帽会社であるその会社は実はなんとプロ野球や高校野球等のアマチュアで使われる帽子のほとんどを手掛ける本物の野球帽メーカー。1つ1つの製品を一人ひとりの職人が魂を込めて作る”クラフトマンシップ”を創業以来貫いている。なんてすごいメーカーなんだろうか。
その製法と美しさに惚れ込んだ井口氏が長年の交渉の末にようやく実現した本物のクオリティにモダンなエッセンスを加えた至高のブランドがポテンというわけだ。
さて、ここからはPOTENの生み出す帽子の凄まじいディティールの数々を紹介しよう。
第一にして最大のディティールと言っても良いかもしれないのが”ツバ”だ。
どこがそんなにすごいのかって??
その答えはツバ部分に施された『ステッチの本数』にある。
型崩れを防止するツバのステッチは、一般的には多くても10本。
その点ポテンはどうかというと、なんと驚くべきことに『19本』もある!!
これは昔のプロ球団のキャップを参考に施されたもの、いわゆるヴィンテージのディティールを踏襲しているのだ。
しかも、一つひとつのピッチも非常に細かく繊細。現在この縫製ができる工場や職人はほぼおらず、まさに熟練のなせる技というわけ。
そのおかげでツバの形をガッチリと保ってくれるのはもちろんのこと、アイコニックなデザインとしても一役買っている。
第二に注目すべきは頭の部分を形作る”フロントパネル”
通常は6枚のパネル生地を合わせて作られるため、俗に「6パネルキャップ」と呼ばれるが、ポテンのキャップは8パネル。
6パネルと比べて被った時の頭のフィッティングとシルエットが格段に良くなる。
じゃあ、どこも8パネルでキャップを作ったらいいじゃないかと思うかもしれないけど、普通のメーカーは作りたがらない。なぜかというと単純に作業工程が増えるし、コストもかかるから。
手間暇はかかっても一切妥協しないポテンのモノづくりには心揺さぶられてしまう。
第三はパネル部分に配された通気口”穴かがり”
通気性を確保して頭の中が蒸れないようにすることのほかに、被った際に帽子が膨らんでフィット感が損なわれてしまわないようにするディティールである。
通常は穴を開けた後に専用のミシンで破れにくいように刺繍で補強して終わるが、それを刺繍ではなく「ハトメ」を使うことによってさらに強度を上げている。
これだけでもすごいが、そこからさらに生地とハトメとの間にレザーを噛ませている。こちらもヴィンテージのキャップに見られる仕様だが、尋常じゃないほど手間暇がかかるので普通はやらない。
ハトメだけでも強度が高くなるのに、さらにレザーを間に挟んでしまうなんて、もう鬼に金棒。
語りたいことはまだある。
続いてはフロントパネル裏、内側のかぶり口に一周縫い付けられている汗どめ用のバンド”スベリ”
このスベリには「ヌメ革」を使用している。
これは単にエイジングを楽しむだけのものではなく、フィッティングにも影響してくるから。
使いこんで汗を吸って、アメ色になっていくにつれて革が次第に自分の頭の形に合うように馴染んでいく。そうすることで布製のスベリでは決して味わえない極上の被り心地が堪能できる。
既製品が自分だけのオリジナルに生まれ変わっていくことで自然と愛着も湧いてくることだろう。
ちなみに革の端部分に見られるジグザグのステッチは「千鳥がけ」と呼ばれる手法でこれもヴィンテージの作りを踏襲している。
フロントパネル裏にはもう1つ細かい作り込みがなされている。
それは裏地だ。
普通は表の生地と同じ生地を使って作っているけど、あえて別生地を使用している。
他人には見えない部分だけど、被る自分だけは知っている。ちょっと気分がいい。
そして、今回MOONLOIDでセレクトしているPOTENは全てサイズ調整が可能なアジャスターベルト付き。
細かなサイズ調整が可能なので、男女関係なく普段あまりキャップを被り慣れていない人でも安心して被ることができる。
リアルレザーのベルトが醸し出す大人の雰囲気が野球少年感をうまく昇華させていて、ファッションとして被りやすい。
また、ツバを少し短めにすることでカジュアルでもキレイめでも合わせやすくなっている。
このモデルで使用した生地は”FUJIKINBAI”
富士金梅(ふじきんばい)とは大阪市に拠点を置く老舗テキスタイルメーカーが作る日本製高級キャンバス生地ブランド。
最近ではアカデミー賞で日本作品として初めて視覚効果賞を受賞した映画『ゴジラ-1.0』の劇中にも使われていたとか。
富士金梅は耐久性と通気性、吸湿性に優れているのが特徴。
タフに長くシーズン問わず活躍してくれそうだ。
使い込んでいくとくったりと馴染み、風合いが増してゆく。色が段々と褪せていくので、それぞれどんな経年変化を見せてくれるのか楽しみで仕方がない。
野球をこよなく愛し、研究し尽くしてきたポテンのこだわりと現代では失われつつある日本のモノづくりの信念や技術、どちらかが欠けていたらこの作品が生み出されることは決してなかっただろう。
ベースボールもベースボールキャップも最初はアメリカで誕生し、それが野球や野球帽として日本に普及していった。
それが今では日本の野球がアメリカを超えて世界一になったり、世界最高峰の舞台であるメジャーリーグで日本人選手がどんどん活躍していたりする。
最初は真似事でも鍛錬を積み重ねれば本物を超えることだってあるのだ。
そして同じように日本の野球帽もいま、アメリカの本家ベースボールキャップを超えるクオリティで世界一のベースボールキャップになった。