ドレスシューズ顔負けの特別仕様
暑い初夏のある日、ANATOMICA東京のショールームでの展示会。
並べられた衣服を試着していると、ANATOMICAの日本のボスである寺本欣児氏が颯爽とやってきた。
MOONLOIDに入る以前からANATOMICAのファンだった自分にとって、憧れの人物。
初対面ということもあって、ワクワクとドキドキで手汗が止まりませんでした。
ポロシャツにチノトラウザーを合わせたジェントルマンな着こなしの寺本氏。
かっこいいなぁと思いながら、ふと足元に目を向けると見慣れないモンクストラップのスニーカーを履いていた。
おそらくWAKOUWAだろうけど、アッパーがスウェードでモンクストラップのモノは今まで見たことがない。
尋ねると、なんでも「A’r11551 FUKUOKA/アール福岡」の周年記念として販売する予定の限定WAKOUWAということだった。
試しに履いてみなさいと促されるままに寺本氏が履いていたソレに足を入れてみて驚いた。
今までのWAKOUWAよりも足入れもスムーズでフィット感や土踏まず部分のホールド感も増していて、とても履きやすい！！
すぐさま寺本氏にMOONLOIDにも少し分けてもらえないかと相談しました。
そんなわけで、他ではお目にかかれないスペシャル仕様のWAKOUWAがリリースです。
ANATOMICAのオーナー、ピエール氏と寺本氏の両氏が最も敬愛するスニーカーが”スペリートップサイダー”。
スペリートップサイダーが1940年代にアメリカ海軍に支給していた通称バナナデッキを参考に、当時と同じ製法で、そしてANATOMICAの真髄でもあるフィッティングを重視した作りを目指したオリジナルスニーカーがWAKOUWA（ワクワ）です。
特徴的なのは、その木型（LAST）にあります。
オーソぺディックシューズ（医療用矯正靴）特有の「インサイドストレート・アウトカーブ」。
この形を作る上で参考にされたのが、1912年にマンソン博士が書き上げた“The Soldier’s Foot and the Military Shoe”という文献。
彼がワシントンの陸軍学校の教授だったころ、4年という歳月をかけ約2,000人の兵士の足を調査。
数千足の靴のフィッティングについて研究し、理想的なシューズの木型が完成させます。
その木型は「マンソン・ラスト」と呼ばれ、今でも一部のミリタリーブーツに採用されているのですが、その全てを記したのがこの文献でした。
マンソン・ラストとはどのような木型かというと、つま先の中心から親指にかけて大きく膨らんだもの。
そのポイントは、足先を締め付けずに足を固定すること。
だから、WAKOUWAのデッキシューズも土踏まずの部分が足の裏と同じようにグググっとえぐれているし、足先は捨て寸を残してゆったりした作りになっている。
これにより、足は土踏まずで固定され足指はストレスから解放される。
驚くほどクッション性を兼ね備えたインソールと相まって、まるでオーダーメイドシューズの様なフィット感を生み出します。
この形状は、これまたANATOMICAの代名詞であるALDEN（オールデン）のモディファイドラストに非常に似ていると言われています。
この複雑な木型は、完成したは良いものの実際に製品にするのがとっても難しい。
生産を可能にしたのは、実は日本が誇る“ヴァルカナイズ製法”でした。
ヴァルカナイズ製法は、本体とソールの間にゴムをはさみ固めることによって接着させる方法。
ゴムそのものでくっついているので、とにかくはがれにくいのが特徴ではあるのですが、以前までの台湾製モデルは洗ったり、雨の日に履いたりすると乾いた後で接着部分が剥がれてパカパカしてしまうことがありました。
しかし！
2024年からインドネシア生産に切り替わったことでつま先のラバーを深くまで被せる作りに改良され、剥がれが起きにくくなりました！
もちろん、それだけではなくアッパーとソールを一体化させることで、滑らかな足の動きにもついてきてくれるんです。
古くから伝わるこの製法も大量生産が主流の現代では手間のかかる希少な製法に。
特にローテクスニーカーファンならヴァルカナイズ製法というだけでビビっときてしまいます。
アウトソールにはスペリートップサイダーの特徴でもある、スペリーソールと呼ばれる犬の肉球を模したソールが使われています。
犬が甲板の上で滑らずに走り回っていることに着目し、犬が肉球を広げた際にできる隙間がグリップの役目を果たしていることの気づきから、その肉球を模したソールはスペリーソールと呼ばれています。
波の様な切れ目がたくさん入ったソールは、滑らかな反り返りと滑りにくさを実現。
雨の日のような滑りやすい路面でもグリップがしっかりと効いてくれます。
そしてアッパーのレザーはライニングを貼らないアンライニング仕様。
軽くて柔らかい、そして足馴染みも良い。
スウェードのラフアウト（起毛）感の強い個体が混ざっていることがありますが、それは寺本氏曰く『大当たり』とのこと。
箱から開けるまでのワクワク感も増してきます。
また、スニーカーながらもシングルのモンクストラップによって感じる雰囲気は、もはやドレスシューズのソレ。
スニーカーらしくカジュアルに合わせてもコーデが引き締まって良いけれど、個人的には革靴を履くような感じで合わせるのがオススメ。
カチッとしすぎず、ラフすぎもしない絶妙な塩梅が気に入って、僕も最近は毎日のように履いています！笑
履き口も広くて脱ぎ履きしやすいし、シューレースのものよりもフィッティングの調整がしやすいです。
今回だけのスペシャルアイテムなので、次回の入荷はおそらくありません。
ANATOMICAファンはもちろんのこと、革靴ラバーな方にもぜひ履いてもらいたいです。
