常識が覆る
1983年、イタリアはフィレンツェでスタートしたDR. VRANJES Firenze(ドット―ル ヴラニエス フィレンツェ)。
唯一の調香師であるDr.パオロ・ヴラニエスの経歴は、香りに対する本気度が生半可ではない。
香水のコレクターである祖父の影響で香りに興味を持った彼は、ボローニャ大学で化学・薬品学を学び薬剤師として独立する。
そして化学・薬学の観点から一度香りを分子的に分解し研究したのだ。
それが大学の研究室や企業の研究所の研究員であるなら、分かる。
ところが彼の場合はその知見を持っていながら、あくまでも調香師である。
職人としての嗅覚とセンスを持つ一方、研究者として最先端の化学・薬学をもってアプローチしているのだ。
1人でこれをやってのけるには、並大抵ならぬ能力と努力があったに違いない。
ROSSO NOBILE(ロッソ ノービレ)はそんなドット―ル ヴラニエス フィレンツェの中で最も人気のある香り。
通常のラインよりも多くの種類のエッセンシャルオイルを使用し、複雑な香りを表現しているコレクションラインに属している。
何を隠そう、私たち自身が愛用している香りもこのロッソ ノービレ。
複雑な赤ワインの香りを表現するために2年の歳月をかけ完成したという。
初めて嗅いだ時には衝撃が走った。
その香りにはわざとらしさが一切ないのだ。
ベリーやシトラスが一面に実っている果樹園から始まり、スミレやバラが繊細に咲く散歩道へとつながっていく。
それは繊細で上品な香りが紡ぐ、幻想体験のよう。
香り酔いを起こしやすい体質なのに、どんなに嗅いでも全く問題はなかった。
大げさでなく、私の中でルームフレグランスの常識が覆った瞬間だった。
世の中にルームフレグランスはたくさん溢れている。
ドット―ル ヴラニエス フィレンツェのソレは他とは全く違うのだが、これにはいくつかの理由がある。
まずは、エッセンシャルオイルの質。
ルームフレグランスはエッセンシャルオイルに水、アルコールとでできている。
その中で最も重要なのが香りを決めるエッセンシャルオイル。
この品質と濃度が別格なのだ。
そのほとんどは天然または限りなく天然に近い分子構造のもの。
その結果、頭痛や胸やけなどの香り酔いがほとんどないと言われている。
拒否反応が少ないから、マタニティの方でも継続して使っていることも多いのだとか。
同じ建物でも部屋ごとに香りを変えてもいい。
部屋ごとに異なる香りが、人が行き来するたびに空気の流れに乗って混ざり合い生み出される奥行きを楽しめる。
そして、ボトル。
ブランドのアイコンでもあるボトルは、フィレンツェのシンボルであるサンタ・マリア・デルフィオーレ大聖堂の屋根をモチーフにしたもの。
商品の外箱にいたるまで全てフィレンツェの職人の手作り。
芸術の街で生まれたこのボトルは、まさに芸術品そのもの。
オブジェとしても存在感抜群だ。
ドット―ル ヴラニエス フィレンツェに出会うまで、ルームフレグランスは部屋に設置したその時の満足度が1番高かった。
それ以降は何となく置いたままというだけで、特に意識することはなかった。
ところがコレは全く違った。
部屋に入った時、ソファから立ち上がった時、深呼吸をした時、そんな瞬間にふわっと香るその香りが心地よいのだ。
思わず目を閉じて一瞬の香りに集中してしまう、そんな感覚。
そして、ちょっとリッチで優雅な気持ちになれる。
もう、最高の自己満足だと思う。