シンプル イズ ベスト
SEVEN BY SEVEN(セブン バイ セブン)は、2015年秋冬シーズンにスタートしたブランドである。
ヴィンテージの知識と独自の感性を融合させ、自由な世界観を表現している。
その背景にあるのは、ゴールドラッシュやカウンターカルチャーの象徴として知られ、アートや思想が交差する街、サンフランシスコ。
ブランド名は、この街の面積が「7マイル×7マイル(49平方マイル)」であることに由来する。
デザイナー・川上淳也氏は、この地でのバイイング経験を通じ、ヴィンテージを希少性ではなく“モノ自体の価値”で捉える視点を培った。
生産背景に縛られることなく、フラットな目線で古着と向き合ってきた彼の姿勢は、90年代の日本におけるヴィンテージブームの中でも一貫して変わらなかった。
マニュアルや前例に頼らず、自身の感覚を信じて生み出される服は、懐かしさとコンテンポラリーが同居する独創的な存在である。
単なるヴィンテージの焼き直しではなく、素材やディテールに宿る価値を新たな形で提示している。
SEVEN BY SEVENは、ファッションの奥深さと美しさを再認識させるブランドである。
80年代のレザージャケットからインスピレーションを受けたこのブルゾン。
この頃のレザージャケットは極々シンプルなデザインのものが主流だが、ちょっとルーズで野暮ったくて現代のファッションには合わせにくい。
しかし、そこはSEVEN BY SEVEN。
シンプルなデザインは残しながらも、現代でも違和感なく合わせられるジャケットへと見事に昇華されている。
使用したのはカシミヤの語源にもなっているカシミール地方で飼育されている羊から取られたシープスキンのスウェードレザー。
カシミール地方は高山に囲まれたインドの最北端に位置しており、年間を通して寒冷な地域であることから、この地域に生息する羊の皮は非常に肉厚でしかも滑らかな肌触りが特徴。
この地域のシープスキンを使用しているメーカーは非常に少なく、それだけに希少価値も高い。
だが、デザイナー川上氏はしっかり現地に赴き、このレザーの質も見極めた上でジャケットに落とし込んでいる。改めてこのモノづくりの姿勢にはリスペクトしかない。
非常にキメが細かくてムラもないスラッとした毛和立ちのスウェードは見ただけで、それが上質なものであることを感じさせる佇まい。
実際に袖を通してみると非常に柔らかく、スッとレザーがその人の身体に沿うようにフィットしてくれるのがわかる。
それはすでに何年も着倒したかのように感じるくらいの馴染み具合。さらに着込めば、最高の着心地になるのは言うまでもないだろう。
シルエットも現代のファッションに即した形でモディファイされており、裾にかけてのややシュッとした作りが全体にクリーンな印象を与えている。
アメリカ的なアイテムはもちろん、シェットランドセーターやウールスラックスのようなヨーロッパテイストのアイテムとも相性が良く、レザーの上質さがより際立って見えること間違いなし。
シンプルイズベストな一着はこれまでレザージャケットを着てこなかった人にも心からおすすめできる名品だ。